いろんなサイトを巡っていると、いまだに「あなたの本を出しませんか」という広告が目に入ります。
素人作家から原稿募って、「本にしましょうよ」「全国の書店にあなたの本が並びますよ」と夢を膨らませておいて、出版費用は自分持ちにさせ、実際は作った本は本屋になど並ばない、という商売です。
結構前に、それの有名どころだった新風舎が倒産し、一時期話題になりました。
その話題のメインはほぼ、「詐欺的な勧誘・営業でダマサレタ!」という被害者の訴訟でしたが、わたしはそれを聞いててたいそうもにょったものです。
(あ、ちなみに文芸社っていうとこも自費出版で有名なとこです。)
商業におけるメジャーな本の流通はおおざっぱに言って以下の通りです。
1.著者が作品を書く
↓
2.出版社が本にする
↓
3.取次が出版社から預かる
↓
4.取次が書店に配本する
↓
5.書店が棚に並べる
↓
6.消費者(読者)が手にとって買う
本(書籍)にはISBNコードという固有の番号が振り当てられます。
これはもちろん1冊1冊違ってて、出版社が所定の手続きを踏んで取得する必要があります。
数字の桁数は決まってるので、無尽蔵に発行できるわけではなく、小さな出版社だと自社では取れなくて、大きい出版社に取ってもらうこともあります。
書籍の後ろにある奥付をみると、「発行」と「発売」が違うのはそういう事情です。
上記で書いた、大きな流通に乗せるためにはこのISBNが必要であり、同人誌など、自分で印刷会社を探して印刷を依頼し製本した本と違うのはここです。
新風舎はこの「ISBNを取得し本につけられる」という意味では、確かに流通に乗せる手段を持っており、「本屋に並びます」というのも全くの嘘ではないわけです。
じゃあなんで、訴訟を起こした被害者の人たちの本は書店に並ばなかったのか。
上記におおざっぱに書いた本の流通経路、この一つ一つの段階ごとにふるいにかけられているからです。
ISBNはついていても、聞いたこともない作家の本を流通に乗せ、書店に並べるにはそれなりの努力と戦略が必要なのです。
書店の数も、書店の棚の数も限られています。置ける本の数は有限なのです。
書店としては「売れる本を売りたい」し、それは取次や出版社も同じ。
ですから、すでに有名になった作家の新刊は手堅いものとしてほぼ確実に書店に並ぶわけです。
でもじゃあ新人作家はどうなのか?
ここが通常の出版社と新風舎の違いとも言えます。
出版社は売り込みの宣伝をしているのです。
折り込みチラシなどの紙類・WEBサイトだけでなく、きちんと出版社の営業さんが直接書店に出向いて
「今度デビューの新人作家さんなんです!イチオシです!置いて下さい」と頭を下げて回ってるわけです。
中には営業さん自身や作家自信の手書きのポップなどを持参したりする人もいます。
作者さん本人が営業に回っていることもあります。
また、書籍の発売の前に、刷り出しと言う書籍になる前の紙束を出版界・書店界に配って読んでもらい、先に評判を作ってしまったり。
まぁそれでも、置いてもらえない本は置いてもらえないし、売れない本は売れないんですが、とにもかくにも、「まずはこの本の存在を知ってもらう」という努力をしている。
逆にそういうことをしないと、名もなき新人作家の本は誰の目にも触れないまま返品されちゃったりするのです。
誰でも名前を知ってるような大手の出版社でもそういう努力をしなくてはならないのに、素人作家を集めて金を本人に出させて出版していることが明白な出版社の本が、店頭に並ぶことはほぼありえません。
こういう、書店業界では当たり前のことを、一般の人は知らないわけですから、その無知につけこんだ新風舎の商売は、詐欺と言えば詐欺。
ただし、今はインターネットもあります。
少なくともこれを読んでいる人は、調べる手段を持っています。
さすがにいまさら引っかかる人もいないでしょうけども、とりあえず知っておいて損はないかな、というお話でした。
あ、本屋のお友達の皆さん、間違いがあったら指摘してくださいm(_ _)m
なにしろ私の知識はもう7〜8年前のものなので(^ ^ ;)